空き家の草刈りは放置厳禁！行政代執行のリスク・費用・頻度・業者の選び方を解説

2025年11月18日更新

「空き家の草刈りをしばらく放置しているけれど大丈夫？」「どのタイミングで草刈りすべき？」といった悩みは、空き家所有者から非常に多く寄せられるものです。

結論からいうと、空き家の草刈りは年1〜2回が理想で、放置し続けると行政指導・近隣トラブル・売却価値の低下といった重大なリスクにつながります。本記事では、法律面・適切な頻度・自力での草刈り方法・業者選びのポイントまで徹底的に解説します。

執筆者

きるかーる代表

齋藤

草刈り専門店「きるかーる」代表の齋藤です。草刈り歴20年以上・1,500件超の現場経験をもとに、東京・千葉・埼玉エリアの空き地管理や大規模草刈りに特化した専門知識を発信しています。実際の作業データに基づき、空き家の草刈りで失敗しないための要点を専門業者の視点からわかりやすく解説します。

空き家の草刈りを放置すると行政代執行のリスクがある

空き家の草を長期間放置すると、景観の悪化や害虫発生など周辺環境への悪影響が増し、最悪の場合は行政代執行の対象となる可能性があります。

行政代執行が実施されると、撤去や修繕の費用はすべて所有者へ請求されるため、金銭的負担も大きくなります。自治体によっては、その対応状況が公的記録として公表されるケースもあります。

【行政代執行とは】
行政からの改善命令に従わない場合、自治体が所有者に代わって草刈りや撤去作業を強制的に行い、発生した費用を所有者へ請求する措置です。実際に工事が行われるため、通常の行政処分よりも強制力・影響が大きい最終段階とされています。

さらに、空き家を売却したいと考えたときには、管理不十分な状態が不動産評価の低下につながり、買い手が見つかりにくくなるリスクもあります。

空家等対策の推進に関する特別措置法について

空き家の管理に関連する法律は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」で定められています。この法律の中で、草の放置も含め、適切に管理されていない空き家は「特定空家等」と判断される可能性があります。

「特定空家等」とは、周辺の生活環境に深刻な悪影響を与える状態の空き家を指し、下記のいずれかに該当する場合に認定されます。

倒壊等により著しく保安上危険となるおそれのある状態
著しく衛生上有害となるおそれのある状態
適切に管理されておらず、著しく景観を損なっている状態
その他、周辺環境の保全上、放置することが不適切と判断される状態

これらの状態が放置されると、指導・勧告・命令を経て、最終的には行政代執行が行われる場合があります。

行政代執行の事例

実際の行政代執行の件数は多くありませんが、下表のように「助言・指導」レベルは3万件を超えており、多くの空き家が改善を求められていることがわかります。

助言・指導	勧告	命令	行政代執行	略式代執行	合計
37,421件	3,078件	382件	180件	415件	41,476件

※国土交通省「空家法施行（平成27年）〜令和4年度末」までのデータ。

行政代執行まで至るケースはごく稀ではあるものの、助言・指導が3万件以上あることからも、草が伸び放題の状態は放置し続けることは難しいと理解できるかと思います。

「できるなら、費用を抑えるために伸び切った状態でまとめて草刈りをしたい」と思う気持ちはわかりますが、草刈りを放置することで近隣住民のトラブルの原因になるケースが非常に多く、仮に住む場合、今後の近隣住民付き合いに影響を及ぼす恐れがあります。

空き家の草刈りを放置するリスク

国土交通省が実施した「管理不全土地対策に関する調査」では、過去3年間に住民から寄せられた苦情の大半が「草に関する問題」でした。特に約98％の自治体が、雑草や雑木の繁茂・落ち葉の散乱・草木の越境を悪影響として挙げています。

さらに、害虫の発生（約62％）、ごみの投棄（約56％）も続いており、空き家・空き地問題の中心に“草の管理不足”があることがわかります。

悪影響の内容	割合（％）
雑草・雑木の繁茂、落ち葉等の散乱、草木の越境	98.1％
害虫の発生	61.6％
ごみ等の投棄	56.2％
その他（土砂崩れ・砂ぼこりなど）	数％程度

このように、空き家・空き地に関する苦情の多くは「草」に起因しています。雑草が伸び放題の状態を放置すると、害虫や小動物が棲みつきやすくなり、近隣住民からの苦情やトラブルにつながります。

結果として、自治体から指導や勧告を受けたり、最悪の場合は行政代執行に発展するリスクもあるため、定期的な草刈りが欠かせません。

リスク① 害虫・害獣の発生

雑草が伸びた空き家は、蚊・ハチ・ダニ・ネズミなどが繁殖しやすい環境になります。特にハチの巣は危険性が高く、駆除費用も高額になりやすいため注意が必要です。

害虫や害獣が増えると、ご近所から苦情が寄せられたり、健康面への影響が出たりする可能性があります。

リスク② 火災の危険性

乾燥した雑草は非常に燃えやすく、夏場や秋口は火災リスクが大きく高まります。タバコのポイ捨てなど、第三者の行動によって簡単に引火することもあります。

空き家で火災が発生すると、所有者が賠償責任を問われる場合があり、大きな金銭的負担につながることもあります。

リスク③ 景観悪化による近隣トラブル

雑草が伸びた空き家は地域の景観を損なうため、周囲の住民から「虫が増える」「通行の妨げになる」などの苦情が出やすくなります。

放置が続くと自治体から改善指導が入ることもあり、対応に手間や時間がかかることになります。

リスク④ 固定資産税が上がる可能性

管理が不十分な空き家は「管理不全空き家」などに指定される可能性があり、住宅用地の軽減措置が外れると固定資産税が大きく増えることがあります。

場合によっては税額が数倍になるケースもあり、草刈りを放置することで思わぬ金銭的負担が発生します。

リスク⑤ 不法投棄・無断侵入の増加

雑草が茂っている土地は「管理されていない」と見なされやすく、不法投棄や無断侵入を招く原因になります。放置ゴミは撤去費用もかさむため注意が必要です。

無断侵入が増えると、防犯面での不安が高まり、犯罪の温床になる可能性もあります。

リスク⑥ 売却時の価値低下

草刈りされていない空き家は第一印象が悪く、買い手が敬遠しやすくなります。敷地の整備コストがかかると判断され、売却価格が下がる要因になります。

見た目の印象が悪いと内見数も減るため、売却までに時間がかかるケースもあります。

空き家の草刈りはどれくらいの頻度がベスト？

空き家の管理で特に問題になりやすいのが雑草の放置です。草が伸びすぎると害虫の発生や景観の悪化だけでなく、近隣トラブルや行政指導につながることもあります。こうしたリスクを避けるためには、草刈りの適切な頻度を理解しておくことが重要です。

一般的には、春から秋の成長期は月1〜2回、冬場は年1回程度の草刈りが理想とされています。また、草丈が20〜30cmを超える前に刈り込むことが推奨されています。例えば群馬県の河川管理基準では、草刈り後の草丈を20cm以下とするよう明記されています（群馬県河川占用許可の手引き）。

草丈が20〜30cmを目安にすべき理由は以下の通りです。

20cmを超えると根が太くなり、作業負担や料金が増えやすい（出典：山口県土木建築部資料）
草が密集し、成長サイクルが早まるため放置すると急激に伸びる
放置が続くと害虫・害獣・火災リスクが増加する
近隣からの苦情や行政指導につながる可能性がある

季節ごとの草刈りの目安は以下の通りです。

時期	特徴	草刈りの目安
春（3～5月）	雑草が伸び始める時期	早めの1回と、その後月1回程度が理想
夏（6～8月）	最も成長が早いピーク期	月1〜2回、草丈20〜30cmを超える前に刈り込み
秋（9～11月）	成長がゆるやかになる時期	月1回、冬に向けた最終刈り込みを行う
冬（12～2月）	成長がほぼ止まる	年1回程度の整備で十分

このように、草刈りは「草丈」と「季節」の両方を見ながら計画的に行うことが重要です。特に空き家の場合、少し放置しただけで手間も費用も大幅に増えてしまうため、定期的なチェックと早めの対応が効果的です。

自分で空き家の草刈りを行う方法と注意点

草丈がそこまで高くなく、敷地もそれほど広くない場合は、自分で草刈りをすることも十分可能です。自治体によっては草刈り機などの道具を貸し出しているところもあり、うまく活用すれば費用を抑えることもできます。

ここでは、自分で草刈りを行う際の具体的な方法や流れ、必要な道具、そして安全に作業するための注意点を整理してご紹介します。

草刈りをする方法・流れ

敷地の状態を確認する
境界線を確認する
草を刈る
刈った草を集めて処分する
作業前後の写真を撮る

まず始めに、敷地全体を歩いて危険物が落ちていないか確認します。石やガラス片、金属くずなどがあると草刈り機が弾き飛ばして事故の原因になるため、最初の点検が非常に重要です。また、近隣トラブルを避けるためにも、隣地との境界線を明確に把握しておきましょう。

準備が整ったら、草刈り機または鎌を使って作業を進めます。敷地が広い場合は、草刈り機を使った方が圧倒的に効率的です。刈り終わった草は熊手で集め、袋に入れて処分します。刈草をそのまま放置すると再び根付いたり、見た目が悪くなったりするため、最後までしっかり片付けることが大切です。

また、作業前後の写真を残しておくと、空き家管理の記録になり、将来的に売却する際の説明資料としても役立ちます。

必要道具

草刈り機（エンジン式・充電式）
替え刃（ナイロンコード・金属刃）
軍手・作業用グローブ
長袖・長ズボン・安全靴
保護用ゴーグル・フェイスシールド
熊手・ほうき
ゴミ袋

自分で草刈り作業を行う場合は、必要な道具を事前に揃えておくことが欠かせません。特に草刈り機は作業効率を大きく左右し、広い敷地や背丈の高い雑草には必須のアイテムです。刃の種類によって仕上がりや安全性も変わるため、用途に合わせてナイロンコードか金属刃を選びましょう。

安全対策も非常に重要です。飛び石を防ぐためのゴーグルやフェイスシールド、手を守る軍手、肌の露出を防ぐ長袖・長ズボンの着用は基本中の基本です。刈った草を集めるための熊手やほうき、処分用のゴミ袋も用意しておくことで作業をスムーズに進められます。

注意点

飛び石事故に注意する
害虫・蜂の巣に気を付ける
熱中症対策を徹底する
刈草の処分ルールを確認する
無理をしない

草刈り作業では、草刈り機の刃が小石を弾くことで、窓ガラスや車を傷つけたり、通行人に危険を及ぼしたりする可能性があります。作業前に地面を確認し、飛び石への警戒を怠らないようにしましょう。また、雑草の陰には蜂の巣や害虫が潜んでいることも多いため、慎重に周囲の様子を見ながら作業する必要があります。

夏場は特に熱中症のリスクが高いため、こまめに休憩を取り、水分補給を忘れないことが大切です。さらに、刈草の処分方法は自治体によって異なるため、事前に確認して正しく処理しましょう。特に傾斜地や荒れ放題の土地は足場が悪く、転倒の危険があるため、少しでも不安がある場合は無理せず業者へ依頼する判断も必要です。

自分でやるか・業者に依頼するかの判断基準

空き家の草刈りは、敷地の広さや草丈の状態、自身の体力や時間によって「自力で行う場合」と「業者へ依頼した方が良い場合」が大きく変わります。費用だけで判断すると後悔することもあるため、下記のポイントを踏まえて総合的に判断することが大切です。

判断項目	自分でやる方が向いているケース	業者に依頼した方が良いケース
敷地の広さ	〜30坪前後までなら作業しやすい	50坪以上、または奥行き・雑木の多い土地
草丈・状態	草丈が20〜30cmまで、害虫リスクが低い	腰〜胸の高さ以上、または荒れ放題の状態
現地までの距離	自宅から近く、何度でも足を運べる	遠方で頻繁に行けない（帰省時のみ作業など）
体力・時間	半日〜1日作業が可能で、体力に余裕がある	仕事や介護で時間がない、体力的に不安がある
道具の有無	草刈り機や安全装備を持っている	道具が無い（買い揃えると意外に高額）
安全性	平地で危険物が少なく、蜂の巣などがない	傾斜地・石が多い土地・害虫の危険がある
仕上がりの精度	最低限の草刈りで問題ない	売却予定・近隣への配慮などで高品質が必要

以上のように、自分で草刈りをする方が向いているのは「比較的狭い敷地」「草丈が低い」「安全に作業できる環境」「道具が揃っている」場合です。一方で、草が伸びすぎていたり、土地が広かったり、害虫や危険物が多い状況では、無理に自力で行おうとすると事故につながる可能性があります。

また、遠方に住んでいて空き家に頻繁に通えない場合も、無理に自力で対応しようとせず、定期管理も含めて業者に任せた方が結果的に安く・安全に済むケースが多いです。

空き家の草刈り業者の種類と費用相場

【空き家草刈り業者の比較早見表】

業者種類	料金	サービス品質	融通さ
地域密着の草刈り専門業者	15,000円〜25,000円前後	◎（草の種類に応じた刈り方や仕上げの品質が高い）	◎（スケジュール調整・追加作業に柔軟）
マッチングプラットフォーム（個人業者）	10,000円〜20,000円前後	△（個人次第で当たり外れが大きい）	○（比較的柔軟だが安全性は不安）
大手の草刈り業者	20,000円〜40,000円前後	◎（研修・品質基準が明確）	△（規模が大きく柔軟性は低め）

比較条件：30坪／草丈50cm以下の場合

相談先① 地域密着の草刈り専門業者に依頼する

最もコスパよく、安心して任せられるのが「地域密着の草刈り専門業者」です。土地の状況や雑草の種類に合わせた作業ができ、見積もりも明確なケースが多いのが特徴です。

ただし、業者によって技術差があるため、以下を確認しておくと安心です。

口コミ・Googleレビューの評価
過去の草刈り実績（ビフォーアフター）
市区町村から紹介されている業者かどうか

自治体の認定や紹介を受けている業者であれば、一定の品質基準を満たしているため、初めて依頼する方にもおすすめです。

相談先② マッチングプラットフォームを活用して個人に依頼する

「くらしのマーケット」や「ミツモア」などのマッチングサイトを使うと、個人業者へ草刈りを依頼できます。料金が安く設定されているケースが多く、口コミも確認できるため比較しやすい点はメリットです。

サービス名	特徴
くらしのマーケット	口コミ数が多く、料金比較がしやすい。個人業者中心。
ミツモア	複数見積もりを一括取得でき、料金の目安が分かりやすい。

ただし、個人業者の場合は技術や対応品質にバラつきがあり、作業後のトラブル（草の処分・仕上げ品質・追加請求など）が発生することもあるため、慎重に選びましょう。

相談先③ 大手草刈り業者に依頼する

全国展開している大手の草刈り業者へ依頼する方法もあります。料金はやや高めですが、次のような安心感があります。

メリット：料金が明瞭、トラブル時の対応が迅速、品質が安定している
デメリット：融通が利きづらい、追加作業の対応が遅いことがある、地域密着業者より割高

「多少コストがかかっても安心感を重視したい」という方には向いています。

ただし、注意点として大手草刈り業者の場合、地域の個人に業務委託で丸投げしているケースがあり、担当者によって品質がバラツキがある可能性があります。

依頼を検討している方は、「草刈りの担当者は社員でしょうか？業務委託・パートナー企業でしょうか？」と確認しておくと良いです。

空き家草刈りの業者の選び方

空き家の草刈りを依頼する際は、下記3点を必ず押さえておくことが大切です。

草刈り専門の業者かどうか
地域密着の業者かどうか
市区町村の認定事業者かどうか

選び方① 市区町村の認定事業者か

多くの市区町村では、空き家の雑草対策として「草刈り業者の紹介制度」を設けています。行政が一定の基準で選定しているため、初めて依頼する人でも安心して利用しやすい点がメリットです。

例えば松戸市では、以下のような業者が市のホームページで紹介されています。

業者名	住所
きるかーる	松戸市八ケ崎緑町323の1の102
東葛清掃	松戸市小金原7の29の21
株式会社ハナノイ	松戸市松飛台215の2
庭屋十兵衛	松戸市栄町8丁目675の26
加藤ガーデン合同会社	松戸市稔台7の19の16
ナオガーデン	松戸市中和倉91の9
有限会社総建美社	松戸市二ツ木2002の24

選び方② 草刈り専門業者か

草刈りはシンプルに見えて、実際は「草の種類」「敷地の広さ」「傾斜」「周囲の住宅環境」などを理解したうえで作業手順を組む必要があります。

専門業者でない場合、以下のようなトラブルも起こりがちです。

草の根が残っており、すぐに再生してしまった
敷地内の境界付近を削りすぎて、隣地トラブルにつながった
刈った草の処分費が見積りに入っておらず、後から追加請求された
機材不足で作業に時間がかかり、結果的に料金が高くなった

これらの失敗は「草刈りに特化していない業者」に依頼した際に発生しやすい傾向があるため、空き家の草刈りは専門業者を選ぶことが必須です。

選び方③ 地域密着の業者か

空き家の草刈りは一回で終わりではなく、毎年継続して依頼する必要があります。地域密着の業者であれば交通費が少なく済むため、毎年の依頼コストを抑えやすいのが大きなメリットです。

さらに、地域をよく知っているため「雑草が伸びやすい時期」や「近隣トラブルになりやすいポイント」など、エリア特有の事情にも詳しく、安心して長期的に任せることができます。

空き家を手放したい場合の選択肢

2023年12月13日より、空き家に対する固定資産税の優遇措置が見直され、管理が不十分な空き家は税金が高くなる可能性があります。「草刈りや管理が追いつかないので手放したい」という方に向けて、空き家を手放す代表的な方法を3つ紹介します。

選択肢① 空き家を売る

草刈りや建物の維持が難しい場合は、不動産会社へ売却する方法があります。空き家専門の業者であれば、傷みがある物件や築年数が古い建物でも買い取ってくれるケースがあります。

売却方法には「買取」と「仲介」の2種類があり、目的に応じて選ぶことが大切です。

不動産会社の種類	特長
買取	不動産会社が直接買い取るため、最短3日で現金化できるのが最大のメリット。急いで手放したい方に向いています。ただし、買取価格は仲介より低くなる傾向があり、相場の7割程度に落ち着くこともあります。
仲介	時間はかかりますが、市場での売却になるため買取より高値になる可能性があります。「できるだけ高く売りたい」方におすすめです。